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紀ノ国屋 世界の食卓から

ワインのお話

紀ノ国屋ワイン担当バイヤー 益戸誠司氏に聞く
夏に世界の最高級赤ワインの産地、フランスのボルドー地方へ出張に行かれた益戸さんに、お話をうかがいました。

シャトーめぐりで気合いが入る

 ボルドーでは、ワインの醸造所を「シャトー」と呼びます。私たちが観光などで見学するようなお城とは違い、その昔、荘園領主が所有する土地でブドウが栽培され、その城館の中でワインが醸造されていたので、原料から製品までの総合ワイン製造所のことをシャトーと呼称する ようになったのです。フランス・ワインのもう一方の名産地ブルゴーニュでは、小規模な農家が何種類かのワインをつくっていて、そういう農家の醸造所は「ドメイヌ」と呼ばれます。それに比べてボルドーでは、一つの銘柄のワインは一か所のシャトーで醸造されています。
「それぞれのシャトーから自分たちのシャトー名を付けて市場に出すわけですから、そのラベルを汚さないためにも、非常にこだわりをもってワインづくりをしています。ブドウの出来が悪い年にはワインをつくらないというシャトーもあります」
 今回、ボルドーの二十くらいのシャトーをまわってこられた益戸さんは、ワインづくりの意気込みを肌で感じ、日本でワインを売る側として大いに気合いが入る思いだったそうです。

ワインブームの日本

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「最近、フランスでは日本のワイン市場への評価が高まってきましたが、そのきっかけとなったのは、田崎真也さんの世界ソムリエ・コンクール優勝という快挙でした。日本人もなかなかやるじゃないか、と一目置かれるようになったのです」
 それに追い風をかけたのは、ブドウの種と皮に含まれているポリフェノールに抗癌作用があるという報道でした。テレビや雑誌に取り上げられて、赤ワインが爆発的なブームを呼んだのは記憶に新しいところです。
「あの時は、赤ワインなら何でもいいということで、味を楽しむよりもむしろ薬感覚で飲む人が急増して、値段の安い赤ワインがかなり売れました。一時的なブームが去った今、本当の意味でワインの味を楽しむ人々が多くなっています」
 現在では、日本はフランスのワインの輸入で世界第三位か四位の国だそうです。
 益戸さんが紀ノ国屋に入社した十五年ほど前は、日本人一人当たりのワインの年間消費量はボトル一本分(750ml)弱だったのが、現在は三倍の2リットル以上にもなりました。
「フランスではその二十倍くらいです。しかしワインばかり飲んでいるわけではなくて、若い人たちはビールも盛んに飲みますし、普段の食事の時には水を飲むことも多いのがちょっと意外でした」
 世界一のワインの消費国はイタリアで、昼間から水代わりに飲んでいる風景をよく見かけます。人々は、酒屋に容器を持って行って、安い量り売りのワインを日常の飲み物として買うことも多いのです。
「イタリアは南北に長い国ですから、気候の違いで様々な品種のブドウが栽培されていて、ワインも軽いものから重いものまで多様なタイプが見られます。しかも比較的安く、気軽に楽しめるのがいいですね」

日本料理にもワインを

 ワインはあまり格式張らずに、自由に楽しんでほしいと、益戸さんは言います。
「肉には赤、魚には白というのも、あまり気にしなくてよいと思います。料理の見た目の色とワインの色を合わせたり、料理のソースなどに使ったものと同じワインを飲むというのもワイン選びの一つの方法です。主に乾杯用に飲まれるシャンパンも、お好きなら食事中ずっとシャンパンで通してもいいのです」
 近頃は日本料理のお店でもワインを用意しているところが多くなりました。お寿司や天ぷらには白っぽく見えるもの、淡い色合いのものが多いので白かロゼ・ワイン、タレで焼いた焼き鳥にはその色で選べば赤ワインがピッタリだとか。
「ワインは食事を楽しむための魅力ある飲み物です。食卓をより楽しいものにするワインが、いろいろなシーンに登場するようになってきたのは嬉しい限りですね」

ワインへのこだわり

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 紀ノ国屋では、野菜や肉、パンなどのいろいろな食材を揃える流れでワインも食事に合わせる飲み物として売り場に置いているのだそうです。
「お客様の買い物カートを覗かせていただきながら、その日の献立をお聞きして、それに合わせるワインをおすすめできるよう、東京・青山のインターナショナル店では常時ソムリエがお待ちしているのです」
 お求めに応じてアドバイスしたり、試飲していただいたりして、お好みのワインを選んでいただく、それが紀ノ国屋のこだわりなのだそうです。
 もうひとつこだわっているのは、ワインの流通経路です。同じワインでも、輸送手段によって品質が変わってしまうことがあるからです。
「温度や湿度、振動などに非常に敏感なワインは、それらの条件が悪い手段で運ばれてくるとかなり劣化してしまうのです。通常は低温コンテナーで運ばれて来るのですが、いい加減な運送業者だとコンセントが外れていたりして…(笑)。ワインの品質は、ラベルと価格だけでは判断できないのです。信用を保つためには、品質管理がとても大切です」
「近頃は、家庭用ワインセラーを持つ方も多くなっていますね。お子さんの誕生年のワインを成人式までとか、ご結婚の年のものを銀婚式まで保存するなんて、ロマンティックなワイン・コレクションもできます」

益戸さんのお話にはワインに対する愛情が随所に溢れていました。

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